隆行は機内で「シートを倒さなかった」

orion10142004-08-02

ほぼ毎日、楽しみに拝見する宇都宮徹壱さんのコラム「日々是亜洲杯2004」。8月2日付けで宇都宮さんは移動の機中での代表選手たちのことを書いている。ほんわかとした温かい気持ちになったのは私だけではないだろう。

鈴木の後ろに座っていた同業者によると、彼は疲れていたにもかかわらず、遠慮してシートを倒さなかったそうだ。われわれ取材陣と同じ飛行機ということで、彼らも相当に気を使ってくれたようだ。そうした気遣いの数々が、とてもありがたく思えるし、一方で「共に決勝まで頑張ろう」という気持ちを新たにさせてくれる。(宇都宮さん)

空港バスから降りるとき、出口で川口能活と視線が合う。バスの中は混雑していたので、当然、私は昨夜のヒーローに道を譲る。すると彼は笑顔で一言。
「あ、どうぞお先に」
 私は大いに恐縮しながらも、年がいもなく感動してしまった。
 昨夜のヨルダン戦で、日本中のサッカーファンを熱くさせたこの男は、そんなことなど一晩眠って忘れてしまったかのように、ごくごく自然な振る舞いで私に道を譲ってくれたのである。野良犬のように汚い格好をした、名もなきフリーランスであるこの私に。
川口については、ミックスゾーンでのそつのない対応には感心するものの、どこか優等生じみた言葉に私は慣れていなかった。だが、ほんのちょっとしたしぐさの中に、人間の本性というものはにじみ出るものである。当人は、そんなささいな出来事などすぐに忘れてしまうだろうが、私はこの時の彼のささやかな思いやりに、己の不明を深く恥じた次第だ。(宇都宮さん)

1日の午後、食事の間の談笑の時ホッとするような話しを聞いた。
どんな緊迫した場面でも、自らのキックで削った芝を拾って元に戻すという行為。そういう話しが私は大好きだが、何気ないそんな気遣いができる選手たちのことを我々は誇りに思う。
一流とはサッカーがうまいだけでは駄目だと思う。
そういえば国立でも、表彰式後、バルセロナの選手たちは全員がピッチ上に転がった空になった足元のペットボトルを、一つひとつ拾って持ち帰っていた。
これは鹿サポとして残念だが、完膚なきまでに打ちのめされた茨城のチームは放置していたのだった、普通に(苦笑)