あぶさん

「もう、酒なら一生分飲んだよ」という福岡ダイエーホークスの松中が、見事に三冠王になった。三冠王は、バース、落合の、18年ぶりらしいが運も彼に味方したのだろう。
ここで松中のことを少し書き残しておきたい。

肥後もっこす”の彼は、八代第一から新日鉄君津を経て、ダイエーに井口らとともにドラフト2位で入団した。アトランタ五輪では全日本の4番を打ち銀メダルにも貢献した。今季は、読売に移籍した小久保の後を継ぎ選手会長も務めた。小久保を兄と慕う彼の責任感の強さは並大抵ではない。膝の怪我が完治し、どんなことがあっても酒なしでは生きていけなかった彼が、今季は禁酒し、今シーズンに賭けたのは正解だった。
井口、城島らの前後を打つ打者にも恵まれ、確かに打点王(03年も打点王)の可能性はあったが、まさか打率まで小笠原を上回るとは想像もできなかった。
1年間、怪我の中をやり繰りした柔軟性のあるフォームが打率稼ぎに貢献したのだろう。出塁率.464、長打率.715は驚異的な数字である。
今季は、パリーグだけでなくプロ野球界最高の成績を残した選手である。

シーズンオフにはうまい酒が飲めると思うが、最近見てると、こころなしか面影があぶさんに似てきたと思う。気の優しい彼は、確かに酒が似合う男ではあった。

彼は昨シーズンオフにも小久保の件で、ただひとり、癖のある球団社長とやり合い、わたり合った。
私の友人は、彼のことを”歩く生殖器”と呼ぶほど、とんでもないあだ名を付けられる程の遊び人であったらしいが、おそらく今季は仙人生活を送ったのだろう。
彼は入団して肩を痛めフォームが狂ってバラバラになり、しばらく二軍暮らしもしていた。

まだ31歳、実は執念の努力家でもある。