「三国志の旅」1

orion10142005-01-14

■「龍」と「鳳凰
今回、出かけたのは主として湖北省。広大な中国大陸の中でも富裕な土地を持つ長江流域にあたる。
ところで、中国は主として2つの文化があると言われる。「黄河文化」と「長江文化」。
どちらも数千年の時を経て黄河揚子江という大河に沿った土地に生まれ栄えた文化だ。
中国は、黄河文明の方が世界的にも有名であるが、実際は同規模の文明が長江沿いにもあったという。最近も長江沿いで多くの重要な遺跡が発掘されている。
それと、中国には、伝説の生き物が2つ。「龍」と「鳳凰」。龍が黄河文化の象徴。鳳凰が長江文化の象徴といえようか。
宗教的にも、儒教(主に黄河流域)と道教(主に長江流域)といった具合に、日本のように単一民族の国のようにはひとくくりでは表現できない。
立ち寄った長江中流荊州博物館では、発掘された古墳の中に残ってあった2千4百年前の絹織り物に鳳凰の模様が残っていた。
重慶の曽さん
世界最大の人口、3千万人を抱える重慶市は、上海から長江沿いを西へ約1800キロ。政府直轄の街となってからの発展ぶりは目覚しいものがあるらしい。中国政府も海岸沿いの目覚しい発展ぶりに比較して、内陸部の経済的発展の遅れを取り戻すべく、中国三大カマドのひとつ、重慶市をその内陸部の中心都市にしようとしている。
三大カマドは、夏季になると灼熱の暑さになるらしい長江沿いの都市、南京、武漢重慶を言う。
重慶は日本企業も数多く進出し、戦前は蒋介石の政治的基盤。その前は、日本政府の中国本土侵略の重要な要塞があったという。

今回、お会いした30代半ばの好青年、重慶在住の曽さんに、「日本戦の、サッカーアジア杯では大変でしたね」と言うと、「一部の熱くなりやすい連中が騒いじゃって・・」と申し訳なさそうに言っていた。

重慶市民は「間違いなく、日本人には好意的ですよ」と曽さんは言っていたが、全般的にはその通りなのだろう。スズキ自動車は重慶に工場を持ち中国での生産拠点としている。

「スポーツとは言え、国同士の戦いをするにはまだ未熟なのです」とも。
私は、戦前の日本軍の行動を、ものの本でしか読んでいないが、現地の老年の人々は「君が代」に対し、どのような印象をお持ちなのだろうか。自分の亡くなった父も、満州鉄道の設計技師として中国侵略当時に働いていたことは人伝えに聞いたことがあるが、そういう意味では少しもひと事ではないのだが。
曽さんのように、笑顔で何の屈託もなく率直に話しができることは嬉しいことだった。
彼はTVで、ブンデスリーガプレミアリーグを毎週欠かさず見ていると言っていた。

曽さんとは、今回の旅を5日ほどご一緒した。
*写真は、夜の上海・南京東路。