【後半戦展望】


(写真、3.28博多の森にて)
アビスパの「前半戦」を振り返り少しでもまとめようと思っていたのだが、時間にその余裕がない。
23節、湘南戦を振り返る前に、足早に後半戦の展望を少しまとめておきたい。

後半戦の課題
1.組織戦術の更なる徹底=強力な守備陣の安定感
2.選手層の厚みを増すこと=底上げ
3.突破力と決定力

J2は、”一長”でもそこそこ戦える。他を寄せ付けない優れた部分がひとつあれば戦えるところがある。
しかし、J1ではそうはいかない。
チームとして安定した戦いを継続させるにはチームバランスこそ必要だろう。
現在、2位以下に圧倒的な大差をつけている京都が果たしてバランスの良い戦いをしてるだろうか。確かに攻撃力は昨年の川崎並みかも知れないが。チームバランス的には昨年の川崎の方が上だろうと思う。
彼ら(川崎)の強さは、昨年からJ1中位程度の力を示していた。京都は、単にJ1へ上がるためだけの戦いをしているだけだとも言える。
また、京都独走の一因は勝ち切れない福岡、山形の2チームの停滞にもよる。
アビスパは、チームとしてはバランスを崩すことはめったにないが、まだ足りないところが多い。

(写真:5.27博多の森にて)
大きくは、課題は以下の3点か。
■守備陣の安定感はまだ。
確かに他のチーム(J2)と比べたら安定感はあるほうだろうし組織で守る戦い方は一段抜けているものと思う。
千代反田も、岡山も、宮本も、川島も、個々の頑張りは称えるべきだが、守備組織を担う安定感としてはまだまだだろうと思う。その相対数値は優れていても、今のアビスパはそれに満足することなく絶対数値を伸ばさないといけない。

守備面での安定。これはホベルト、松下の、今季の両ボランチの存在が相当に大きいと思う。
チャンスの芽を摘む彼らの働きはJ2でもナンバー1と言って良いし、中でも、ホベルト(26歳)の持ってる技術力に裏打ちされた精神力と闘志は、アビスパのチームとしての闘魂の中核をなすものである。
23歳の松下も、彼のそばで技術を磨き日々成長しているように感じる。彼の展開力とキック力が活きるのもホベルトがいればこそだと思う。

しかし、後方に立つディフェンス陣の安定感はまだまだだと思う。
昨年後半の怒涛の連勝の大きな要因は、増川(名古屋へ移籍)・千代反田(25歳、筑波大)、両センターバックコンビを中心とした守備陣の安定によるものである。
今季は、千代反田の怪我もあり岡山が中心になったりしたが、4人のDF陣についてはまだキッチリとした形を作れないでいる。
昇格を目指した戦い方をするならば、この第3レグの大きな課題が強固な守備陣を熟成させることにあると思う。
また昇格叶った際のJ1で安定した戦いを見せていくためにも、今季から右SBを担う中村北斗、左のアレックスとともに、2人のセンターバックを中心とした守備陣の更なる熟成は急務だと思う。

(写真:7.15博多の森前にて)
■底上げ
アビスパは、J2、4年目を迎えた。
数年前は破綻寸前といってもいい位に困窮していたクラブは、財務的な基盤を立て直し(累損は残っているとはいえ)ようやく健全な経営ができるようになってきた。
資金力の面では、金満クラブには遠く及ばないアビスパであるが、若手を育てながらチームつくりをしてきたし、併せてチーム存続のための施策と財務改善しながらも”結果”を求められてきた。
昨今の若い世代の充実ぶりは、クラブにようやくにしてプロサッカークラブとしての体制が整ってきたといえるのかも知れない。

7月16日のサガン鳥栖戦の前にセレモニーがあったが、今年のJユース大会で3世代(U−12、U−15、U−18)ともに選手権大会に進出できたことは特筆すべきことだろう。

また、天才の呼び名高い鈴木淳君(16歳)も、当然ながら8月に愛知県豊田市で開催される国際ユース大会のU−16日本代表に選出された。

文武両道で育てられた彼は、秀才が集う県下の名門・福岡高校に通う超エリートでもある。
彼がサッカーの道を歩き続けるのか、父の跡を継ぎ医師の道を選択するのかは、地元としても未だに注目の的ではあるが。

また、同じく雁ノ巣で練習する仲間でもあるU−20日本代表での中村北斗柳楽智和の活躍は、クラブの底上げの大きな励みにもなるし、彼らは我々の「希望」でもある。
このように、底辺の広がりは、かってないほどの充実をみせトップチーム以外は、Jの模範でもある広島に勝るとも劣らない体制になってきつつある。
トップチームの方も、19歳の中村北斗田中佑昌らが主軸となりつつあり、若かった平均年齢が更に下がりつつある。

しかし、今季、唯一みじめな戦いをした札幌戦を忘れてはいけない。
ホベルト、アレックスふたりが欠けるとまだ底の浅いチームである。おまけにあのゲームには、グラウシオも不在であった。

徐々に若手が育ってきたとはいえ、チーム力の点においては、まだまだ能力の高いブラジル人トリオに大きく依存している面が強い。
チームには、林、福嶋、釘崎、田中などFW陣だけでも鍛えれば楽しみな選手たちは多い。今季の田中佑昌(19歳)は、将来に大きな可能性を秘めてゲームに立てるようになった。彼は、ここ5試合で4得点である。
クラブが2,3年後には大きな楽しみを持つ選手たちを抱えていたにしても、DF陣も、中盤も、前線の選手たちも何とか経験を積ませながら、幹部の育成的ひらめきと厳しい指導によって一人前に育てていくしかない。
外国人選手の代わりは難しいかもしれないが、彼らが不在のゲームでも、少なくとも無様な試合にはなって欲しくない。
メンタル面も含め、更に若手の個人能力の引き出し方をじょうずに(厳しく)やって欲しいと思う。

(写真:4.16博多の森にて写す)
■突破力

[第23節までの順位]
     勝点 勝利  引分 敗戦  得点  失点
1.京都 54 17   3   3   40  22
2.福岡 39 10   9   4   33  22
3.山形 34  8  10   5   29  21
4.札幌 34  9    7    7   27  25
5.甲府 33  9    6   8   40  33

後半戦は、「連敗をしないチーム」、「失点をしにくいチーム」が上位に残るだろう。

京都、福岡に次いで山形、札幌はバンランスの良いチームである。特に、水戸からFWデリレスを移籍させた札幌は強力なライバルとなるであろう。
甲府は、その得点力は群を抜いているが、まだ失点が多過ぎる。立て直しつつある6位仙台と7位湘南も侮れないチームになってきた。
山形と福岡は、引分け病でもある。個々の課題の克服とともに、ここを凌ぎ切るには勝ち切るだけの”あと一歩”、”あとワンプレイ”の精神的強さを持てるかどうか。

ここ数年、構造的な悩みともなっているが「攻撃力」がアビスパの重要な課題であることに変わりはない。

前半戦、ドローゲームがなんと9試合もあった。そのうち勝てていたゲームは5試合以上はあった。つまり前半戦で勝ち点10を失った。
前半戦は、なんとか先制はするが後半試合終了直前ギリギリに失点しドローで終わるゲームが多かった。

戦術的欠陥も多少はあるかも知れないが、この要因はむしろ守備的な問題でなく、攻撃力にあると思う。
こちらの「攻め」のベクトルが衰弱すると、今度は相手チームの攻撃の芽が膨らんでいく。
中でもFW陣の決定力のなさは、J2でも下位の部類であろう。

前半の総得点31点(1試合平均1.4点)ではいかにも得点が少なすぎる。
ちなみに、本年の京都が1.8点(第22節迄)、前年の川崎が2.3点、前々季の新潟が1.8点である。

ロペス・ワグナーが連れてきた助っ人グラウシオは、技術もあって本当にうまいが、ロペスのような真の突破力はない。
そういう意味では、FWらしいFW、林や田中の飛躍的な成長が待たれる。
一昨年もそうであったし昨季の好調時もそうであったが、チーム力からすれば、「2得点以上のゲームが当たり前」と言われる位の決定力を現在は失っていると思う。
後半戦、それさえ蘇れば、京都などは怖くはないはずだ。