「敬意」
ゲーム開始前のアップが始まった。 バクスタもゴル裏もカメラを出し、携帯をカメラモードにし彼に集中した。 大声援でアビスパの選手たちを士気鼓舞する猛者たちも、彼をチラッと見ていた。 眺めていた。 彼は声援に応えた。 アップしながら右手を上げた。 軽やかだった。
98年WC予選を共に戦った代表メンバーの城彰二も、山口素弘も、彼の前では「その他の一メンバー」でしかない。
カズにはいつまでも長くプレーして欲しい。日本中のサッカーを取り巻く人々の、これは願いであるはずだ。
ゲームが始まった。 前線で必死に動く。J2の舞台でも、ボールさえあれば真面目に真摯にプレーする彼。 仲間に、中盤に、守備陣にユビ指し指示する。 いつもの、歩幅の狭い素早い走りで仲間に合わせようとする彼。 そして、アビスパの選手たちにとっては雲の上の人。 こころの中では、直立不動になって、彼を、彼のプレーを眺めていたに違いない。 中高生時代は、代表選手はいつでも憧れ。 山口でさえ。 その山口に、古賀誠史はスレ違いざまに握手を求めていたのだ。
攻め手が見つからないからではない。
前半は、その先達(せんだつ)たちに敬意を持ってゲームしていた。
後半になり、ようやく、その場に、その雰囲気に慣れたのか。
ようやくに、サッカーをし始めた 若いアビスパの選手たち。
相手DFに退場はあったが、3−0は現在の力通りの結果だろう。
シュート数 前半 後半 | 得点 アビスパ 2 11 | 3 横浜FC 4 0 | 0
■勝ち点差7
次戦、札幌戦は、相手の選手たちもサポたちも「大一番」と言ってるが。
確かに、彼らにとっては。
この時期、3位以下に差をつける機会であることに間違いない。
アビスパにとっての大一番は、10月23日の九州ダービー(博多の森)とそれに続く29日の京都戦(西京極)であるだろう。
もちろん、GK水谷はじめ選手たちも、6月の博多の森で、札幌に0−3で完璧に粉砕されたゲームを忘れてはいない。