「蝉しぐれ」

藤沢周平作品は、02年に「たそがれ清兵衛」が山田洋次によって最初に映画化(真田広之宮沢りえ主演)された。
その後、同じ山田監督によって04年に「隠し剣鬼の爪」が映画化(永瀬正敏、松たかこ主演)され、日本映画ファンのみならず、海外でも好評を博した。
自分も非常に丁寧に作られた両作ともに優れた作品だと思っている。
この後、山田監督は、藤沢作品をあと1本を予定していると聞いている。
これが完成すればいわば藤沢作品3部作となる。


さて、黒土監督による藤沢作品「蝉しぐれ」である。
時間ができたので、ようやくに評判の映画を見ることができた。
前回足を運んだ時は全席指定の映画館で、自分に都合のいい時間帯がソールドアウトで見れず、その後も機会なくようやくこの日となった。
自分にとっては手間がかかったが、とても見る甲斐のある映画であった。
以下、雑感。

ひと言で表現すると。
「切ない映画」。
これから映画館に足を運ぶ方もいるだろうから詳しくは書けませんが、人生の切なさをこれ以上に表現した映画はない、と思える程。後半は、切なさに胸が締め付けられ、自分はあふれる涙を止めることができなかった。

撮影は、本作が初カメラマンとなる釘宮さん。自分は、この映画の一番の優れたところは、実際、カメラワークだと思う。
映像は、美しい日本の四季の風景を合い間にはさみながら脚本を追っていく。その素晴らしい映像こそがこの映画を気高いものにしていると思う。
主に、この原作の舞台となった庄内地方の風景を使ったようですが、中でもカメラの引き方、フレームの切り方、ライティングなどが日本のどの映画よりも素晴らしかった。
どこかのTVのように、下手にアップばかりの画面にヘキヘキしている者としてはとても新鮮な映像であった。

監督によると「透明感のある役者」を揃えたというが、緒形拳大滝秀治加藤武らのシブくて味わいのある脇役陣がこの映画を引き締めている。中でも母親役の原田美枝子は存在感があり素晴らしい演技であった。
大滝秀治ファンとしても、彼の健在ぶりを確認できて良かった。
主演は、市川染五郎木村佳乃

この映画はお勧め。