「ディシプリン」その1

2月25日、ホテルニューオータニ・芙蓉の間にて福岡ブルックス主催の「開幕直前講演会」なるものが開催された。
アビスパの池下専務の漫談に続き(笑)この日のメインであった松田監督の、非常に興味深い講演が開催された。

アビスパの後援会会員あるいは応募に当選された方が約500名ほど参加されていたのだが、講演のタイトルは「ディシプリン」であった。

■日本サッカーの父
ボスニア戦を戦ったドイツ・ドルトムントはWCドイツ大会でブラジルと対戦する会場でもあるが、実は、日本サッカーの父と言われるデットマール・クラマーが育ち成長した場所でもある。

『いいチームというものは犠牲の上に生きている。犠牲というのはもちろん当たり前のことかもしれないけれども、努力を惜しまない、時間を惜しまないということだ。その中でも一番大きくて苦しい犠牲というものは、エゴの一部を殺して自分のエゴをなくすような方向に努力して、そのなくした分をチームのために貢献すること。それが一番大きくて苦しい犠牲だ。チームの役に立つことは死力を尽くして行い、チームに害のあることはすべてあきらめる。』(デットマール・クラマー

『サッカーにディシプリンは欠かせないもの。良いチームで規律性のないチームを探そうと思ったら絶対に見つからないだろう。素晴らしいチームというのは、やはり規律も整っている。』(同)


バクスターディシプリンを学ぶ
松田さんは、長崎出身。長崎北高から筑波大学を経由し東洋工業マツダSC/サンフレッチェ広島の前身)に入った。

彼に大きな影響を与えたのは94年、サンフレッチェでJリーグ1stステージ制覇したスチュワート・バクスターである。94年は、松田さんがサンフレッチェでのコーチ兼任の年。
翌年の95年、松田さんはバクスターとともにヴィッセル神戸へ移籍する。(この1月、阪神淡路大震災
バクスターは、その後、スウェーデンリーグで優勝し、ノルウェーリーグ、イングランドU−19代表監督、南アフリカ代表監督などを経て今年、再び神戸のユニフォームを身にまとうことになった。バクスターもまた規律の人である。

松田さんは、サンフレッチェ時代に実践的にバクスターからディシプリンを学んだのだろう。
■「本来、日本はディシプリンに溢れる国だった」
まず松田さんは講演で、パワーポイントを使いながらクラマーの言葉を紹介した。

『若い選手たちは生活、仕事、トレーニング、試合に対して昔とまったく違う考え方を持っている。しかしサッカーにディシプリンは欠かせないもの。良いチームで規律性のないチームを探そうと思ったら絶対に見つからないだろう。素晴らしいチームというのは、やはり規律も整っている。自己抑制。バーなどで女の子と夜遅くまで遊んでいる人間が、同時にサッカーで良い選手であることはあり得ない。サッカーの世界でマイスターになろうと思ったらほかのすべては犠牲にしないといけない。今日(こんにち)の若者を素晴らしい選手に育てるということの方が、たぶん難しいことだろう。』(デットマール・クラマー