ディシプリン

「ピッチと生活面は繋がっている」(松田監督)

今年の2月25日(土)に、「ディシプリン」と題して松田監督の講演会が開催された。
まとめようとして時間なくそのままになっていたのでここで振り返りメモ的に残しておきたい。
■「チームに意思を持たせること」
松田さんはチームを5年ぶりにJ1に復帰させたが、良い内容でゲームをやってはいるものの今季開幕から結果が出ていない状況で、眠れない日々が続いている事だろうと推察する。
ここで今、彼を擁護するつもりも非難するつもりもないが、チームとしては「意図した通りにアビスパらしく戦っている」のと、数多くの怪我人を抱えた中で「若いサブの選手たちの成長」が顕著なのは喜ばしいことではある。
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さて、何故ディシプリンなのか。
彼は講演で、以下のように話していた。

ディシプリンは、チームとして最低限の共通理解と約束事
・チームに「意思」を持たせ、意図あるサッカーを行うための重要なファクター
・チームに統一感をもたらす
・組織的でスキのないチーム作りに不可欠

家庭における「躾」みたいなものと説明していたが、組織サッカーを行う上で「すべきこと」と「してはいけないこと」を明確にし一人残らず選手たちに実践させることだとも言っていた。
■Discipline(規律)
松田さんは講演会で「ビデオ」を使い、象徴的な二つのシーンを写す。

A.某チームの安易なディフェンスによる崩され方とゴールシーン
  =ボールを奪われた選手の切り替えの遅さによる「ファーストディフンダー」の緩慢な動き

B.FW林のゴールシーン
 =他チームの「セカンドディフェンダー」のちんたら歩くディシプリンの無さ加減

A.については、ボールを失った瞬間の3m、5mの動きが守備的には全てを決めてしまう。ピッチ上で残念がる暇はない、と、話していた。

B.については、守備側のリスク管理を言ってるのか。映像を止めた上で、守備的に「遠い選手の陣形(隊形)」をキッチリ指摘していた。
林に見事にやられたこの選手のポジショニングの悪さ。つまりボールが来る直前でなくその前の段階で走り出し、林をケアしておかないといけない、と。

「ボールから遠い人ほど集中がとり辛い」と、松田さんはピッチ上での集中力の差を語っていた。
ディシプリンの無いチームは必ず失点が多い」
「良いチームで、規律性の無いチームを探そうと思ったら絶対に見つからない。」とも。(ここでは某代表のことは触れません・笑)

我々は、TV画面に映るボールホルダーやボールの行く末ばかりを目で追いがちであるが、守備の時だけに限らず、ボールのないオフザボールの動きこそが良いチーム作りの前提であることを認識しなければならない。
そういう意味でも、可能な限りのスタジアム観戦は欠かせないのだが。

ディシプリンだけでは得点できない
ディシプリンとは、チームの勝利のための戦術遂行の意思」であると言ったのはクラマーさんだったか。
松田さんは「個の及ばない部分を組織で全力を尽くす、という意思(姿勢)」と語っていた。

しかしである。
組織だけでは得点は取れないことも事実である。

ジーコの前の代表監督であるトルシエは、まるで「組織」の権現のようにある部分では表現されるが、実は攻撃時においては彼は、選手個人のクリエイティブなイメージ作りと1対1で戦う意思を強調していた。
02年WCロシア戦前の直前ミーティングで、ヒデ、小野、ヤナギの3人を集めその点を強調していたシーンがあったが。

話しを戻して、
J2であれば組織でなんとか崩し得点に至る場面があったとしても、そうはいかないのがJ1であろうと思う。

全世界のサッカーチームの永遠の課題が得点力であるのだろうが、1試合のうちに数度しか訪れない限られたチャンスを、しっかりものにするのかしないのかが勝利の分かれ目である。

下の方のコメント欄にも書いたのですが、「得点される雰囲気もないが、得点できる雰囲気もない」。あるいは、相手の守備陣はなんとか崩せても、「そこから先がない」というのが最近のアビスパであろうか。
■補強をサボったツケ

最後の、最後の1点は、疲れ果てた時にでもチャレンジできる尋常でない「強い気持ち」であったりするし。
ただ単に走るのが速いというだけではなく、瞬間判断と瞬間スピードがとてつもなく速くて、その動き方がとにかく「凄い」、とかの部分を持ち得ていないと得点には至らない。
あと一歩の動き、それも普通でない動きの速さ。そして鋭さとチーム戦術を超えた強い気持ち。

守備側が予想もつかないような2列目からの飛び出し。精度の高いクロスに合わせる攻撃陣形。
日々の厳しいトレーニングも重要ではあるが、攻撃面で強い個性を生かす”戦い方”も重要だと思う。それを松田さんがやろうとしているのかは知らないが。
さて、長谷川氏がFW補強をサボっている間に、序盤から怪我人も多く出てチームは守備組織だけのチームになっている。

今こそ、決定力を身につけているグラウシオや、精度の高いクロスを持った左の匠・古賀誠史の復帰が待たれる。

この時期、国内には誰も残ってはいない。
林に身体の入れ方などを教えるのはどうかコーチに任せて、長谷川氏は荷物をまとめてブラジルへ旅立つべきだろう。