今季初勝利

[J1第9節、アビスパ福岡アルビレックス新潟]:博多の森球技場
■熟成途中の組織サッカー
アルビレックスは良く組織化されたチームで、前線とDF陣の距離がまるで狭く、コンパクトに整備された立ち上がりは、いつぞやのベルガーサッカーを見てるようだった。
そういう意味では戦術的には非常によく似た同士といってもいいと思うが、序盤から主導権はアルビレックスにあった。
ぐいぐいと個の力だけで押しまくるサッカーはどこかで破綻がくるものだが。
これまでの8試合戦った中では、ジェフに次ぐハッキリとしたチーム組織の意思を読みとれた。熟成途中の組織サッカーとしては何度も観戦したくなるような質の高さを感じた。
しかしGK水谷の好セーブや、千代反田と金古を中心とした強固なDFと、ボランチホベルトの優れた危機察知能力でアルビレックスは流れを十分に掴み取れなかった。
この日のアビスパは、何より怪我人の復帰が大きく。個々の選手が精神的にアグレッシブな状態でこのゲームに臨んだように思えた。
詳しくは触れないが、ゲーム前の練習からいつも以上に選手たちのモチベーションの高さが伺えたからだ。
■強い気持ち「どうしても今日は勝つ」
ゲーム前のバクスタ裏の屋台*1そばで、敬愛するサッカージャーナリストである中倉さんにご挨拶したが、中倉さんもこのゲームの手ごたえを表現されていた。
スタジアムの観客は決して多くはなかったが、スタジアムの全体に「どうしても今日は勝つ」という高い温度のエネルギーが満ち満ちていた。
TVでは感じれない部分ではあるが、その包み込む高いエネルギーが選手たちの背中を一層押し続けた。

『非常に残念な結果なんですけれど、やはり福岡の方が運動量、攻守の切り替え、セカンドボールに対する反応等、全てに上回っていました。前半は悪くはなかったんですが、セカンドボールが中々拾えずに、こちらのペースにならなかったところでミスをしてしまって失点しました。』(アルビレックス鈴木淳監督の試合後談話)

アビスパは、今日は11本のシュートを放ったが、半分以上(6本)が枠に飛んでいた。
先制点は前半の40分過ぎ。
この日高い身体能力を十分に発揮し右サイドに蓋をしていた中村北斗の駆け上がりながらの、右からのグラウンダー気味のクロスからだった。
グラウシオがJ1初ゴール。グラウシオは開幕以降の足の不調でチームに貢献していなかったが、奥さんも来日されたそうだがこれでようやく一仕事ができた。
この得点の意味は非常に大きかった。
先制され、アルビレックスの組織に緩みが見えたように思えた。
■采配当たる
後半18分、アビスパはいよいよ待ちに待った古賀誠史を投入する。
3月16日、右膝内側側副靭帯損傷で全治4週間。今のアビスパにとって、彼のようなキレのあるプレーヤーは貴重である。
誠史の加入でアビスパの左側が活性化した。
そして後半30分、アレックスがFWの位置に上がる。
どちらかといえばアビスパの左側がこの日は穴でもあったが、アレックスを上げた跡に宮本を配置することでDF的には十分に堅くなった。
采配の妙である。
アビスパでは、誠史とアレックスの左利き同士の組み合わせがもっとも得点力能力を発揮する。
ロスタイムにアレックスのゴールが決まったが、誠史とのコンビで作ったチャンスでもあった。
ゲーム内容は決して褒められたものではないが、とにかく欲しかった結果だけは手に入れた。
ようやくの長い時間を要して、アビスパ福岡が5年ぶりにJ1で勝ち点3をあげた。
歓喜の叫びが博多の森をおおった。

*1:この日の屋台には、ブラジル屋台が出店し一番に長い行列を作っていた。国内の競技場のグルメ部門で1,2位を争う博多の森に、新たなメニューが加わった。