武士の一分

BUSHI NO ICHIBUN
この山田洋次監督藤沢作品3部作の最終作は、非常に良質な作品とみた。
傑作。
見終わって。熱いものが込み上げ、それを抑えきれずしばらく椅子を立てなかった。
優しさとか愛とかそういった軽く表現されるものでなく、男と女について、互いに支えるべき者について深く考えさせられた。
見方によっては地味な映画ともいえるが、それでも儚い人生の機微を日本の美しい風景に乗せて撮られていた。
わたしたちの侍の時代は、日本を鎖国へと追いやり世界から隔離させてしまったが。その代わりに美しい文化や謙虚で礼儀正しい世界も創出させた。
木村拓哉には弱くて強い男を見た。
木村が段々とうまいタレントから一人前の役者へと変化する様も自然で良かった。彼と坂東三津五郎との殺陣シーンは、すさまじく壮絶であったが美しい絵として撮られていた。

この作品も、真田広之の「たそがれ清兵衛」、永瀬正敏の「隠し剣鬼の爪」ともに、下級武士のつつましくも潔い世界を描いているが、3部作の中では強く夫婦愛を語っている点で特筆される。

山田洋次の三部作が完成した。