「ボランチの役割」とホベルトの退団その1.

ホベルト解雇
さて、驚いたのはホベルトの解雇。
宮崎キャンプは始まったばかり。突然の解雇で驚いたのはすべての地元チームのサポーターやファンでした。
個人的には宮崎にはホベルトの姿を見る楽しみもあったので誠に残念なことでした。
ホベルトは、昨年のチームキャプテンでありピッチ上ではいつも中央に存在し、長くチームの骨格でありました。

このことを知らせる友人からのメールにも書いたのですが、彼はチームの背骨を支える人体でいうならとても重要な「骨盤」の役割を果たしていました。
ある時は怪我も厭わず、そして大事な場面ではカードも厭わず。チームの為に奮闘するホベは誰からも愛されていた。博多の森でもっともコールされる選手名のひとつがホベルトでした。
バイタルエリアに蓋をするだけでなく、一時期チームが左サイドからの攻撃しか組み立てができない中、ゲーム終了間際までその自陣左サイドの奥深くまで攣った足を引きずりながら懸命に忠実に全力で守ろうとするのがホベルトでした。

一部の選手を除くと、チームの為に己の肉体の限界を超えた働きをする選手でホベルト以上の選手はいませんでした。
■実力社会ではあってもクラブとしては「選手をリスペクトする」ということ
しかし何故、”この時期”なのか。
わたしの今回のホベルト解任の疑念はこの一点に尽きます。
チームの構想外であるなら当然昨年ブラジルへ帰国する前に通告すれば良かったし、またリティの意図したものであるなら、少なくとも今年のチーム体制を発表する前でなければならなかった。ホベルトがゲームにさえ出場することが叶わないチームの戦力になってない選手ならまだしも。
「1年でJ1復帰」を目論むリトバルスキーの、指揮官としての手腕については後ほど述べますが、少なくともこのチームの屋台骨であり、昨年度の主将であり、アビスパのチームとしての”魂”とまで言ってよいホベルトを、この時期に解任するやり方は、選手へのリスペクトを欠けた仕事ぶりであり、この点においては小林氏の大失態であるといえましょう。
こういう仕事ぶりを続けていけば他から良い選手が来る訳がないのですから。
サポーターやファンに大きな失望を与えただけでなく、今シーズンも含めた今後のホベルトの選手生命を考えると、とてつもなく大きな問題を残したと言えると思います。

国内のクラブチームでは、JFLや地域リーグならともかくキャンプを張ろうかという時期にほとんどの上部クラブは体制を整えてしまっています。
何よりブラジルに返すなら昨年の帰国の時でなければならなかった。

彼なら、十分にブラジルの一部で働けるし、国内でも中位以上のクラブで働き場所はあるはずです。
■広い視野に立てないフロント
クラブの長期ビジョンの不在。
定まらぬチーム強化方針。
全ては現場任せ。
指揮官が代わると一からやり直し。
継続性のかけらさえない。全てはこれにいきつく問題なのですが。これについてはこれまで散々触れてきましたので今回は触れません。

この、地方の財源のない中小のクラブが守備組織をしっかりと組み立て「ホベルトのチームになれば良いチームにれる」。そう思っていたのは私だけではないでしょう。
チームが抱える問題点の一番は決定力にあり、FW補強にあったわけですが、成るほどホベルトのお陰もあって極めて被シュート数の少ないチームになりました。

しかし突然チームは別の方向へと向かい始めました。

前季の入れ替え戦に敗れた瞬間から、「どれほどの選手が残ってくれるのだろう。」「中心選手のほとんどが残らないかも知れない。」サポーターのそんな杞憂の中、新任のチーム統括である小林氏の奮闘で、主力ではなんとか千代反田と水谷の完全移籍だけで済みました。

「このチームで仕事をしたくてたまらなかった。」
「自分の念願だった。」小林氏のチームを思う気持ちとこれまでの仕事ぶりは実に評価すべきものです。
小林氏自身の口からお聞きしましたがチームを「育成型」へと戻しユースなどの育成に全霊を上げて取り組みたいということと、リティがメディアの記者達の前で繰り返している「一年で1部へ戻す」というチーム作りのジレンマ。
限られた予算内で結果を出すべくチームを統括するのは小林氏です。
いずれにしても解任を通告されたホベルト選手がいっときも早く働き場を設け、彼のすさまじい危機察知能力がこれまでのようにピッチ上で繰り広げられることをひたすら祈りたいものです。
勇気をもらい感動を続けた私たちは、あなたのことは絶対に忘れないのだから。