「ボランチの役割」とホベルトの退団その2.

ボランチの役割の大きな変化
聞くところによると「ボランチ」という名称はブラジルと日本だけのものであるらしい。
しかしセントラルミッドフィルダーやセンターハーフという呼び名よりもボランチという呼び名の方が我々にはしっくりとくる。そしてサッカーのスタイルや戦術が日々進化する中で、ボランチの「役割」と「存在意義」は大きく変化しているようにも思います。

日本代表監督であるオシムさんは「走らない選手は使わない」といっているが、彼の就任によって守備専の選手や前に張るだけの前線の選手たち、つまり旧態依然とした専門職の選手は代表には呼ばれないようになった。
昨今の代表チームでは、従来ボランチの役割を果たしていた選手がディフェンスラインに位置し、大きな舵取りとともにしかし布陣的には流動性を帯びたサッカーで、後ろの選手が前線に攻撃参加する場合もある。多面的で流動性を重んじるオシムジャパンにおいてはチーム全員がボランチの選手で組まれてもおかしくないほどになっている。
代表チームに限らず現代サッカーにおいては多種多様の役割を果たせる選手こそが尊ばれる。

現代サッカーにおいてボランチの選手に求められるものは何だろうか。単に前線と後方の繋ぎ役だけでない重要な役割を担っているように思う。

ミドルシュートによる決定力と相手DFを下げる役割
・前線への展開力と舵取り役
・決定的な仕事となるスルーパスの供給者
・相手のスキを突き流れを変えるポジションチェンジ
・前線の選手との連携パスで中央突破を図る
・ボールを奪ったら素早くドリブル突破しビッグチャンスを作る
バイタルエリアのスペースを埋める動き
・攻撃に絡んだサイドの選手のカバー
・前に上がったDF陣のカバー
ペナルティエリアに侵入された際のGKの補佐
・相手に食らい付き相手の攻撃を遅らせる
・相手の動きを読みパスカットする

国内でもJリーグ創生期に於いては、「トップ下」と言われる選手の役割が大変大きいものでありましたが、近年、それよりもボランチの存在意義が大変大きなものになりました。
試合全体の”流れ”と”空気の読める”優れた選手こそがボランチの役割を果たせるのと、近年では技術力以外に運動能力が大きく求められるようになりました。
ボランチこそチームを決定付ける
昨年、チームとして大きく成長した川崎のゲームは3試合ほどスタジアム観戦できました。観戦する度に感じたのは、中村健剛と谷口が組むボランチ流動性は国内のチームの中では一歩も二歩も抜けていたように思いました。
また限定された選手層の中で戦っているトリニータシャムスカサッカーもボランチの舵取り役と位置づけがチーム内においては大変に重要であるように見受けられます。前季のトゥーリオエジミウソンの両ボランチコンビは、シャムスカサッカーを見事に体言していました。
国内においては中村健剛、今野、鈴木啓太などが優れたボランチの選手として上げられますが。良いチームほど優れたボランチの選手をもっているし彼らを生かしたサッカーになっているように感じます。
また強豪チームを見ればみるほど守備専門のボランチが随分と減ってきているようにも見受けられます。
さて、ホベルトは稀にみる”危機察知能力”に優れた選手で、チームにおいて守備的な面での彼の存在はとてつもなく大きかったし、近年の被シュート数の少なさは彼の存在を抜きにしては語れないものです。その点に於いてチームが求めるものを見事に体言していましたが、しかし彼はボランチの選手としては成長過程であり、中でも視野の広さと展開力が彼の課題であったように感じています。