問題点は解消せず

[J2第42節、福岡ー水戸]長崎県営総合運動公園
諫早の森に中秋の名月が美しく映える中、ゲームはスタートしました。
中村英之
34節笠松では前田さんの規律の取れた戦いぶりに大いに苦戦した福岡。布部のロスタイムゴールでようやくドローに持ち込みました。
このゲームも前半は福岡がボールは持つ(持たせられる)が、攻めに入るまでの時間がかかり過ぎ(相手の守りに余裕を与え)ペナルティエリアまで中々ボールを運べませんでした。
4−5−1の水戸は前田さんの指示でディフェンダーの中村英之ボランチの位置に置き、アレックスにぴったしマンマークさせました。
前半福岡に効果的な仕事をさせなかったのは、そのこと(前田さんの指示)が功を奏したと思います。
相手(福岡)ボールになると中村はどこまでもアレックスを追いかけ、とにかく忠実にアレックスに仕事をさせまいとしていました。
水戸は福岡にボールを持たせカウンター狙いに徹していました。
前半21分、水戸の素早いカウンターが決まります。今の福岡のようにDFラインを臆病なまでに下げればバイタルエリアはぽっかり空きます。(この件は後述します)
鋭いカウンターで1トップのFW塩沢にゴールされ水戸が先制しました。
久藤清一
今の福岡はベテラン3人のチームです。
布部は熱いハートでチームを鼓舞、久永はゲームの機微を見分けることができ、久藤はゲームを作ることができる選手です。
中村北斗を除くと、彼らだけがJ1仕様の選手であり、どんな厳しい戦いの中に置いても自らの能力を発揮できる選手たちです。
後半12分その久藤が、動きの悪かった川島に代わってピッチに現れると、ゲームが一変します。
ゲームが活性化するとはこのことをいうでしょう。
久藤は的確にDFラインに指示をしラインを上げさせ、全体をコンパクトにしようとしました。
そのことで中盤から前にボールが回るようになりました。パサー(の名手)でもある久藤がいない時には前線へ的確にボールを運べませんでした。
また水戸の両サイドに疲れが見え動きが鈍くなってきたのも福岡に数多くのチャンスが作れた要因でもあったように思います。水戸は左の久永にはファウルで止めるしかなく右サイドの田中佑昌には完全に抜かれていました。

『前半と違って、ワイドの選手がスピードに乗った状態で1対1が出来る状況になっていて、アビスパが一番得意とする突破の形からやられてしまったということですね。やはり、うちのボランチの出入りのところでのコーチング、マークの受け渡しが出来なかったというか、一瞬でしたけれど、そこが問題でした。』

ゲーム後の前田さんも語っておられるように、1対1で戦う福岡に疲れの見えた水戸は数的優位が作れなくなり個が追いつかなくなりました。
そういう状況に追い込んだのは久藤清一の瞬間判断に優れたゲーム運びが成せる技だったと思います。
途中に中村の見事なミドルはありましたが、福岡は立て続けに3点を奪いました。
■問題点は解消されず
こちらでもキャンプの頃から書いていますが、福岡の問題点はハッキリしています。
リトバルスキーもその点はわかっているはずです。しかしその対策処理を選手に伝える術(スベ)と彼には修正能力が欠けてるように思います。
一流の監督は絶対に連敗(3連敗以上)をしないものです。その点では彼は並の監督だと思いますが、しかし彼はアレックスの能力適正を見抜き配置転換し田中佑昌の並外れたスピートを生かすようにすることによって、チームに得点力をもたらせました。
リトバルスキーの1対1に強いチームへと脱皮しようとするその「志」の高さは十分に評価すべき点だと思います。この点においてはアビスパ福岡はここ数年の問題点(得点力不足)を解消したように見えます。
しかしそれ以上の欠落点をチームに生み出しました。
このゲームでもそうでしたが、それにしてもDFラインの下がりすぎは目に余ります。
福岡は互いにカバーし合う、連動し合うという守備組織のチームでした。リスクは伴いますがDFラインを上げ(続け)フッキやパウリーニョのような1対1に強いJ2では屈強なFWにはオフサイドトラップを仕掛け、イラつかせ消耗させるチームでした。
今年は後半になると疲れからDFラインはますますジリジリと下がります。
DFが揃って下がるとバイタルエリアがスカスカになる。
今の戦い方では例えホベルトのような献身的な選手を置いても問題解決しないように思います。
他のチームにはラインを下げる理に適った戦い方も確かにあります。しかしその戦い方は1人だけを下げる戦い方であり、もしくは2バックの場合だけのように思います。
ウチのように4人がラインを形成して揃って下げる戦い方はなかなかお目にはかかれません。
ベルガーさんやトルシエのように美しいラインディフェンスでなくともあと5メートルでいい、DFラインをあげることで問題は改善できるように思います。
パウリーニョやフッキ相手の1対1ではミスは許されません。
「選手たちがミスを冒した」リトバルスキーの口癖は聞き飽きた感じもします。前節の愛媛戦もそしてこの水戸戦も、途中出場した久藤は「ラインをもう少し上げろ!」と指示していたように私には見えました。
愛媛に3失点、水戸に2失点。
あえてリスクを背負ってラインを上げ全体をコンパクトにすることこそ、福岡の大量失点の改善策だと思います。
守備専門コーチ不在とリトバルスキーと選手の間に立つ有能な日本人コーチ不在は、いつまでも問題を放置したまま私にはシーズンを終了させるてようにしか見えません。
フロントを含むリトバルスキーの修正能力の欠如によって、チームはJ2中位へとヒタ走っています。