フィジカル強化

環境抵抗については食物のことに限らず、サッカー選手にも言えるかもしれない。
現在、改めて読み返している山本氏(アテネ五輪代表監督)の備忘録であるが、その中に興味深い内容があった。

ナイジェリアで世界ユースを戦う前に、アフリカで長く指導の経験があるトルシエは、当時の黄金世代に対して劣悪な環境のホテルに宿泊させたり、宿泊先で出された食物をそのまま食べさせたり、予防注射など要らないと協会と対立したりした。
トルシエは指導者としてそのような”蛮性”があったと、山本氏が後に述懐している。(「備忘録」より)

また日本人選手のフィジカルについて、サンドニの惨敗の時にヒデだけが何事もなくフランス代表の選手たちと戦えたことについても、山本氏は書いている。
サンドニとは2001年3月24日、日本代表が屈辱的なスコア、5−0でフランス代表に惨敗したゲームのことだ。

スタッド・ド・フランスは見た目よりも芝の状態が悪く、凸凹があってイレギュラーはするはわ、雨でぬかるんだ状態に足は取られるわで散々だった。(中略)
その芝で飄々とプレーし続けた唯一の日本人選手が中田英寿だった。普段からそういうピッチに慣れているから足場が悪くても軸がブレない。下が緩いと、接触プレーの強さ弱さが余計にあぶり出されるのだが、中田英寿だけは相手もぶつかりあっても倒れなかった。ただし、その強さを中田英寿個人のものとして認識するのはどうかとも思う。彼がやれるということは、他の日本人選手も欧州の環境に慣れればきっとできる、と考えたほうがいいと思うのだ。(「備忘録」より)

良き指導者とは、選手たちにただ単にいい環境を作ってあげるだけでは駄目なのだろう。フィジカル的な点のみに着目してみると、選手たちの劣悪なゲーム経験や環境が非常に重要であることがわかる。