「晩秋山形紀行」その4

■天童温泉に浸かり、天童将棋と「安藤広重美術館」に触れる

ゴッホゴーギャンに強く影響を与えた浮世絵師たちの作品は、遠く海外に流れている。北斎も、写楽も、そして広重も。

その広重美術館は、全国に4箇所ほどあると言う。ここは天童広重美術館。
「絵師」だけの作品ではなく、それは「彫り師」、「刷り師」たち名人たちの共同作品。江戸中期の、本物の職人たちによる東海道広重は、目を見張るほど、見事に美しい。このような日本が誇る腕を持った職人たちは、江戸末期以降、もはやこの世には存在しないのだ。
私たちの故郷は、多くの”技”を失っている。

少し熱めの天童温泉に浸かり、温泉神社を抜け、広い歩道を歩くと天童将棋の職人の店があった。小さな将棋の駒に彫った文字も、数多くの種類があることを知った。将棋の名人たちもここを訪れているらしく、壁には名人たちの色紙が飾ってあった。20万円もする将棋板の前でしばらく逡巡し、三3の位置に、桂馬駒をパチリ!と打ってみた。