J2展望
そろそろやっておかないと、開幕日も迫ってきた。
もちろん、「アビスパ視点」でしかJ2の今季の展望などはできない。(完全に色メガネ付きなのでご容赦を)
■守備力の勝負
まずは、昨年の結果から。
勝点 試合数 勝 分 負 得点 失点 得失差 1 川崎フロンターレ 105 44 34 3 7 104 38 +66 2 大宮アルディージャ 87 44 26 9 9 63 38 +25 3 アビスパ福岡 76 44 23 7 14 56 41 +15 4 モンテディオ山形 71 44 19 14 11 58 51 +7 5 京都パープルサンガ 69 44 19 12 13 65 53 +12 6 ベガルタ仙台 59 44 15 14 15 62 66 -4 7 ヴァンフォーレ甲府 58 44 15 13 16 51 46 +5 8 横浜FC 52 44 10 22 12 42 50 -8 9 水戸ホーリーホック 37 44 6 19 19 33 60 -27 10 湘南ベルマーレ 36 44 7 15 22 39 64 -25 11 サガン鳥栖 35 44 8 11 25 32 66 -34 12 コンサドーレ札幌 30 44 5 15 24 30 62 -32
福岡の話は、後述するとして。
前季の大本命は、京都だった。また、仙台、札幌などがここまで順位を下げるとは誰も思っていなかった。
京都には黒部もいたし、崔龍洙も、フランスへ旅立った松井もいた。その圧倒的な攻撃力で京都が抜けるだろうと、最初は考えられていた。仙台もチーム力は、川崎や大宮より上位だと私は思っていたし、何より、どこより優れた指揮官を有していた。
それと、戦前には、川崎がここまで圧倒的な大差をつけるとは考えられなかった。
上記のこの表を見る限り、川崎、大宮がスムースに上位に位置し、後半になって息切れしなかったのは、その失点の少なさにあるといえるだろう。(川崎、大宮の失点は、1試合平均0.86である)
本命・京都が崩れたのも守備力にある。福岡の失点数と比べても12も多い。川崎、大宮との失点の差は15もある。
■魅力的だった甲府
前季、自分が観戦したゲームで一番に魅力的なゲームをしていたのが甲府だった。案の定甲府は、一時は昇格圏内に入ろうとしていた。
残念ながら天才レフティ・小倉(元日本代表)の疲労とともに後半に息切れしてしまったが、小倉を中心に中々いいゲームをしていた。
甲府が、戦力から見て好位置につけ続けたのは、地元サポの熱心な後押しや黒字経営の努力をしたクラブ幹部の努力もあるが。チームとして全員が連動し、失点しにくいゲームをしていた要因故であると思う。得失点差も昇格争いをした山形と同程度の+5である。
甲府のゲームは観戦に値した。
昨季の順位表を見てもおわかりのように、失点が50(1試合平均1.14)を超えるようなチームは、昇格争いなどはハナから無理だ。
大崩しないこと。際どいゲームでも勝ちきる守備力を有することこそ、J2の上位の条件であるだろう。
私は、余程圧倒的な攻撃力を有しても、守備力の安定こそがJ1昇格圏内の条件だと思う。
■今季もやはり京都が本命なのか?
今季は、J1から降格したチームがない。代わりにJFLから2つのフレッシュなクラブがJ2の仲間入りを果たした。
将来は、J3ができた時点で、J2⇔J3の入れ替え戦なども行われるのだろうが。現時点では、全チームともJ2からの降格の心配はない。
各クラブは、安定した経営を目指し、クラブを黒字化しながら、J1昇格の夢を描く。
今季、J1昇格候補は、全チームと言うべきであるだろうが、やはりクラブとしての本気度や戦力補強などを客観的に見ると、数チームに絞られる。
そういう意味では昨年の成績と今季の補強内容を見ればおおよその検討がつきやすい。
■昇格組
徳島、草津の2チームとも、どちらも第1レグ(11試合)をどのように入ってくるか、注目したい。出だしを良いカタチで入っていければ、台風の目になるかも知れない。
JFLを圧倒的な攻撃力で勝ち上がってきた徳島は、自分たちの力がどこまで通用するか、かなり攻撃的な戦いをしてくるものと思う。99年から指揮をとっている田中監督も、完全にチームを掌握している。前橋にも出かける予定でいるが、徳島にも一度行きたいと思っている。
草津は全国にファンが多い。天皇杯の活躍も強烈なインパクトがあった。鳥居塚と氏家の両ボランチには注目したい。草津は、熱いサポの後押しを受けて、いい戦い方をしながら段々と強くなっていくものと思う。自分も応援したいチームだ。
■注意すべきチーム
上記に書いたように、甲府は、昨年以上に充実していると聞いている。
新主将・倉貫、鈴木隼の両ボランチや、FW小倉のキープ力に、積極的なサイドの上がりやオーバーラップは、昨年以上に充実していることだろう。
湘南とともに、混戦になれば上位へ食い込む面白い存在となるに違いない。
湘南は、上田さんのシンプルサッカーに、今年は、昨年以上に激しい運動量を求めた戦い方をしてくるだろう。加藤、佐藤の移籍組が刺激になり、個々のレベルアップとともに、全員で守り、攻撃するスタイルは脅威となるに違いない。
守備力の強い水戸も今季は面白い存在だ。元々気迫に溢れたチームであるが、昨年後半から磨きがかかってきた4−5−1のシステムも成熟度を増してくるだろう。
■安全牌はない
札幌には、鹿島から池内が入った。
池内、曽田らを揃える3バックは、必ずや守備力強化に繋がり、ヤンツーさんも昨年のような不本意なことにはならないだろう。
何より札幌は、どのチームよりも若い。パスサッカーの基本を植えつけた上でのヤンツー2年目は侮れない、と私は思う。
足達さんが就任した横浜FCも、引分け続き(22引分け)の昨年とは違った戦い方、つまりラインを高く保ったリスクをかけた戦い方をして相手にプレッシャーを与え続けるようだ。選手層も、昨年よりかなり厚い。うまく行けば中位以上の成績を上げるものと思う。
鳥栖は、まるで生まれ変わった。経営陣だけでなくコーチ陣も強化し、チームは一新した。昨年までは不安が募るクラブだったが、生まれ変わった鳥栖ほど可能性を秘めているチームはない。後半息切れした昨年と違って移籍加入で選手層も厚くなり、有能なフィジカルコーチも戦力に加わった。
宮原、ビジュを生かす守備能力に長けた飯尾など、魅力的な戦力を備えた。今季も鳥栖スタへ行く楽しみができた。
■ライバル
山形は、昨年中心となって働いた星、梅田、大島(昨季22得点!)らが抜けた。中でもMF星の不在は大きいと私は思うが、横浜Fから移籍してきた阿部祐大朗や鳥栖からの本橋、と好素材は入った。
山形は元々ベースがあるチームなので、後は決定力。FW原、チッコらの活躍いかんにかかっていると私は思う。
仙台は、広島へ移籍したFW佐藤寿人の不在が大きい。ドーハ組であり、新人監督の都並さんは、ディフェンスを4バックにし、まずは守備力強化をうたい上げている。
SBの人材が少し薄い気もするが、主将の熊谷、菅井のボランチ陣は安定している。
バロン、財前らFW陣の決定力が試されるだろうが、都並さんの手腕も未知数。
京都は、2人のブラジル人FWが未知数。ただ、中払、星、斉藤、米田の中盤は、J2最強といってよいかも知れない。
京都は、ビッグネームを移籍で出した代わりに、同じJ2のライバルチームから軸になって働いている選手を取った。戦力補強とすればこれ以上ない高度な戦略だ。
福岡とすれば、中払、星の2人のサイドプレーヤーに勝たなければ勝機はない。
■福岡は第2レグトップなら昇格できる
今季のJ2は、全般的にそれほど格差のない戦いとなるであろう。昨年の川崎のようなダントツのチームは現れないと私は見ている。
そういう意味では、福岡は、下位チームから着実に勝ち点を稼ぐこと。重要なのは、特徴である組織的な守備力を一年間通して機能させることだろう。
気迫に満ちたセンターバック・増川の名古屋移籍で守備力の不安があったが、どうやら移籍組でその穴を埋めることができるようだ。
京都へ移籍したボランチ米田は、危険察知能力に長けていたが、攻撃面ではボールをさばくのみの選手であった。汗かきのホベルトと組む選手が、鹿島の青木のような展開力のあるボランチであれば鬼に金棒だと思うが、松下がどこまでやるか興味深いところだ。
どうやら、U−20日本代表中村北斗が大きく成長しているようなので人材豊富なサイドプレーヤーは心配していない。昨年のMVP山形兄もシーズン途中から復帰できる。
福岡の課題は、決定力。組織守備ではおそらくJ2一番だと思うので、ここに課題が残っている。
44試合の長丁場を考えればエジウソンの契約解除は本当に痛いが、今季高得点が見込める有光の相手は、ポストのできる、ボールの収める所となれる懐の深いFWだ。
現有勢力では帯に短し、襷に長しだと思う。そういう意味では林や福島の成長が待たれるところだ。電柱・太田は、息詰まるゲームのセットプレー時と、先制点を上げて逃げ切る時にDFの前で仁王立ちさせて使いたい。
今季は、ここ2年続いた序盤の不調(スロースターター)は許されない。
若い選手たちが後半に良くなることはわかっているので、序盤にどれだけ飛ばせるか、が「J1昇格のノルマ」の条件となるであろう。