可能性という名の苦境

[広島ー鹿島]:広島ビッグアーチ
広島は勝ち運遠く、これまで3試合3分けで失点も少ないが、なんといってもジュビロと並んで得点が少ない。間違いなく課題は得点能力にあるといって良い。
しかしやってるサッカーは、広島ほど可能性を感じるチームはない。
長いシーズン、うまく行かない”苦境”とも言える時期がどのチームにもあるものだ。広島は今がその時期だと私は思う。
大切なのは、自分たちのやっているサッカーが間違っていない、という確信こそが必要だと思う。
■前半は広島が圧倒
しかし4−3−3の攻撃的サッカーは見てて楽しいし、中でも、前半と後半のゲーム開始20分位までのこのチームの「連動」は素晴らしいものだった。
MFベットが高い位置でボールを奪取し、大木、茂木、ジョルジーニョの3トップの絡み合う攻撃は見事なものがあった。そう、「後は決めるだけ」なのだ。
ゲーム開始から、鹿島の新井場サイドは広島が圧倒していたし、攻撃時のバイタルエリアには、いつも2人以上の選手がいた。そのせいか鹿島のボランチ青木側も手詰まり状態だった。
■小笠原の老獪さ
しかし、ゲームの結果は、野沢の唯一のゴールで鹿島に軍配が上がった。
ゲームの流れを読み切る能力を持つ鹿島。
行けるとこまで行こうとする若い広島。この日の広島はゴールネットまでの距離が本当に遠く長いものだった。
鹿島の勝因は、本山のうまさや、アレックス(ミネイロ)の老獪な動きもあるが、私は小笠原こそが、このゲームの全てを見抜き、彼一人こそが、空中から鳥瞰図を眺めながらゲームメイクをしていたように思う。
彼の、広島優勢時からの流れを読む目には、ほとほと感心するほどで、あるタイミングでは中盤を後ろ目に下がり短いパスで流れを変えようと苦心していた。
決して打ち合いのゲームをしようとしない小笠原の見所が、若い広島に肩透かしを食わせ序盤の勢いを押さえ込んでしまった。
有り得ないことであるが、万が一、前半の25分までの猛烈な動きとコンパクトプレスが継続していたなら、鹿島は手も足も出なかっただろうと思う。
それらに冷や水浴びせ、サイドブレーキを引かせたのは老獪な小笠原の仕業である。
もちろん、あれだけ広島が飛ばしてしまうと、後半バテる。
現在は、ゲーム全体の流れを読み、ゲームを作るというメリハリこそが広島に求められるべきものであろう。
■課題の多い鹿島
元々鹿島は清水と広島というチームが伝統的に苦手である。
この日も足元パスだらけで、持ち過ぎや玉離れの悪さは相変わらずだったし、ワンツーやスルーや、たまにドリブルの変化を生かし相手を翻弄すべき本山が今日は不調であった。
それだけ個としての広島の動きは良かった。
それなのに広島は、後半、前線に誰もいないのにロングパスを放り投げたり、2列目からの飛び出しがなかったりしたのは残念なことである。
■前田について
広島には、まだ原石のままだが磨けば眩しいばかりに光るダイヤモンドたちが多い。前田もそのうちのひとりである。
この日の前田は、小野さんの指示なのだろう、裏を狙おうとせず、引いてボールを受け、タメを作ったり、起点になろうとしていた。
私は、ゴールに近い位置や裏を狙える位置に彼を置くべきだと思った。ゴールを狙える位置こそが彼に相応しいと思う。
■MVPは、クロスバー
鹿島は、ディフェンス面では岩政が利いていたように思う。岩政は、このまま経験を積み成長していけば、やがて秋田の位置まで昇りつめることであろう。
またFW田代は、後半アレックスと交代出場したが、鹿島においてのJリーグ戦初出場となった。彼のキープ力や身体のしなりの強さ、またヘディングは非凡なものがあるので今後に期待したい。
今日のMVPは、なんといってもクロスバであろう−。バーをたたく衝撃音を、両チームとも何度も響かせていた。
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広島広域公園の桜は満開。地鶏は中々の味。
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両チームのゴル裏サポ。鹿島の小太鼓のリズム打ちはうまい。

ゲーム開始前。

FW田代も磨けば光るダイヤモンド
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試合後は市内へ。並木通りをブラリ歩き、その後お好み焼き。