名匠対決

■「マルハン」マッチデー
この日は、シャムスカさん対オシムさんという「名匠対決」として世間の目を惹いたが、財政危機に陥った大分トリニータへの支援を打出した「マルハン」グループの、大分サポーターへのお披露目の日でもあった。
当日の雰囲気は、ゲーム前にビッグアイで行われた「人前結婚式」の模様とともに写真館にアップしましたが。驚いたことに、マルハンは、韓会長はじめ役員・幹部、そして全店の店長が顔を揃えた。
それは、企業として総がかりで大分トリニータを支えていくという意思が十分に伝わるものだった。

・次週、超強力攻撃陣のガンバに立ち向かう現在のジェフの調子はどうなのだろう。
(自分は国立のナビスコ決勝(観戦)を楽しみにしているひとりですが)
・また、久しぶりの大分トリニータは、シャムスカさんの手によってどんな風に生まれ変わっているのだろう。
・不調な時分は前線と後ろが延びきった退屈な戦い方をしていた大分の、昨今の快進撃の要因のポイントは何なのだろう。
・このゲームで、分析家でもあり研究家でもあるシャムスカさんが、老獪なオシムさん相手にどのような手を打ってくるのだろう。

この日のゲーム前の楽しみはキリがないほどあった。
■自信深めるトリニータイレブン
新たに大分に赴任したシャムスカは、分析家であり熱心な研究肌の指揮官とは聞いているが、おそらくサッカー心理学も勉強しているものと思う。
試合は、大分にとってはホンのちょっとの不運と決定力で敗れはしたが、選手たちはホイッスルの最後まで、一向に畏れることも怯むこともなく戦っていた。

現在の大分は、決して連続得点のマグノアウベスや評判の高いボランチコンビ(トゥーリオエジミウソン)だけのチームではない。
U−23代表に選ばたほどの高松や根本らが以前はベンチを温める時期もあったが、何より伸び伸びとプレーしている。
自分は、高松がまるで鈴木隆行のように前線であれほど守備をするとは夢にも思わなかった。この日一番の新鮮な驚きだった。
自らの意思で、自らの肉体を駆使し精神にムチ打ち呼吸困難になりそうになりながら高松は走っていたように見えた。
シャムスカにキャプテンマークを任された吉田孝之は、トップ下でジェフの才能・阿部勇樹と堂々と渡り合い身体を張って戦っていた。
DFラインには高校3年の福元君が頑張っていた。

これまで勝ち続けてきたことが自信に繋がっているに違いないが、苦手である筈のジェフ相手に選手たちは堂々と渡り合い戦っていた。
阿部勇樹という深くて高い才能
ゲームには流れがあり、リズムがある。サッカーにおいては、ピッチ上でそれを読み取る目を持つことは何より大事であるが、阿部勇樹の大きな特徴はこの点にあるのだろう。
阿部は、技術的にも超一流のものを持っているが、彼は、守るときの激しさ、攻めに転じた時の潮目の読み方を十分に心得ている。
この試合、攻めに転じた時の前線方向に切れ込むスピードは、22人中一番であった。

大分は、前半から相手チームの長所を消しゴムで消し去り、前線からの激しいチェックと寄せでスペースを塞ぎ、しかもコンパクトな狭い空間に相手チームの選手たちを押しやりボールを奪い取ることに懸命だった。前半は特にそれがうまくいった。

千葉は、相手ボールになった瞬間ひとり二人と囲い込みスペースを与えなかっただけでなく、自陣ボールになった瞬間、中盤から前の全員が、なんとも全速力で一定方向へ走り出し、その攻守の切り替えの速さはまるで稲妻のようであった。

ところで、オシムサッカーを体現しているのは阿部の職人的才能に他ならない。
そしてこの日、シャムスカが分析仕切れない、事前に読みきれない予想範囲を超えたプレーができるのも彼しかいなかったのだろう。
案の定である。後半35分過ぎ。このゲームを決めてしまったFKからの得点までに至る点と線は、阿部の指図によるところからであった。
前半や後半途中に大分が攻勢に出た時、ジェフの選手たちの落ち着き具合にも関心したが、その中心にいたのは阿部勇樹だった。
■審判
このところ主審のジャッジにフラストレーションがたまるゲームが多いのだが。
このゲームは松尾氏が笛を吹いた。
両チームともに非常に激しいゲームをしたのでいつも以上に判定に神経をスリ減らしたはずだ。

激しいが汚くはないプレー。
汚くて激しいプレー。

どちらも似ているが全く違う。その見極めはスタンドからでも少しはわかる。
前半10分過ぎの熱くなったハース(と梅田)の場面だけは、喧嘩両成敗的な日本人的なおかしな判定をしたが。
両チームの運動量は半端なものじゃなく多かったが、西村氏の運動量も大したものだったし今日の彼はポジショニングが良かった。
西村氏は、ホームに厳しいものだったが全般的にいい判定をしていたと思う。

これから、J1は、優勝に絡む試合はもちろん「残留争い」と、J2の「昇格争い」で非常に重要なゲームが多くなる。
どのチームも未熟な審判の判定も乗り越えてこそであるが、審判の長い笛がゲームをぶち壊すのだけは止して欲しいものである。
審判は、ゲームの流れを己の笛で自在に止めることができるが、できればカードは一試合3枚以内にして危険なプレー以外は流して欲しいものである。