歌声に、銃声止む

[戦場のアリア]:仏、独、英共同合作、クリスチャン・カリオン監督作品
現在、全国でたったの17館で上映中。日本では映画好きにもそれ程注目されていない作品であるが、欧州各地では大ヒット。中でもフランスでは観客動員第一位を記録したらしい。

『戦地という極限状態、さらに緊迫した前線にいる兵士たちが戦地でのつかの間の温かさを味わえた〈クリスマス休戦〉のきっかけとなったのは、ドイツ人テノール歌手の素晴らしい歌声だった。
この役柄は当時、実際に慰問公演を行っていたドイツのテノール歌手、ヴァルター・キルヒホフである。1914年のクリスマスにドイツ軍の塹壕で歌っていたところ、100m先のフランス軍の将校がかつてパリ・オペラ座で聞いた歌声と気づいて拍手を送ったのだ。そしてヴァルターが思わずノーマンズ・ランドを横切り、賞賛者のもとに挨拶に駆け寄ったことから、他の兵士たちも塹壕から出て敵の兵士たちと交流することになった、という得がたいエピソードが史実として残っている。
ノーマンズ・ランドの境界線は、戦争を始めたごく一部の軍部指導者間で決められていたが、音楽には境界線などなく、同じ気持ちで祖国を想う兵士達に友情の交流を生んだのである。』(「戦場のアリア」オフィシャルより)

荒んだ戦場に鳴り響く、たったひとりのテナー歌手の歌声が、国家の”大義”をも吹き飛ばしてしまうという実話に基づいた作品で、良質な仕上げの映画であり秀作。