踏みとどまる

■長い長い苦難の回り道
今の現状(成績)では、ゲームは「川勝氏の指導力向上の為」にだけあるのではない。
「すうじ」が全てという理由で途中交代したわけだから監督には結果以外のなにものも求めてはいけないはずだ。
川勝氏の場当たり的戦術は、これまでまるでウイイレのように選手の駒を変えることで表現されてきた。
そしてチームは崩壊し、このチームの唯一の特徴(強み)である守備組織を滅茶苦茶に破壊してしまった。
おそらく彼自身どうしたらいいのか大きな迷いの中で、今季序盤のビデオや昨年のビデオでも見たに違いない。
しかし長い長い遠回りをしてようやく川勝氏も気づいたようだ。彼が”普通レベル”の監督になれるかどうかは彼のこれからにかかっている。
■チームがバランスを取って戦うということ
大分戦は、ゲーム開始から前線からのプレスが効き、攻撃の際は無理して両サイドが一緒に上がることもなく戦った。チームが安定して見えるので落ち着いて観戦することができた。
まるでいつか見たサッカーであった。
これまで川勝氏はチームの問題点をその決定力にあると考え、攻め手に手数をかけた。
守備練習さえ一切省き得点力を向上させる為に幼くも中学部活のようなサッカー戦術を取ってきた。
サポーターにとってはこれまでは悪夢の期間であったが、この日のゲームで、バランスを取れば相当戦えることに気づいたはずだ。いやしかしそれもたまたまであるならこの先悪夢から絶望へと変化する時期が来るかも知れない。
そういえばこの日受け身になった後半の時間。選手交代が10分ほど遅れたのは選手たちの守り方にみとれていたからなのかも知れない。
前目で戦う北斗やタフな辰徳の鋭いパスを生かす為にも、最初に打つべき手は薮田をスピードスター佑昌に代えるべきだと思ったが、そうしなかったのはこの監督がまだ選手を生かす術を身につけていないからなのかも知れない。
いずれにしてもトリニータにも問題は多かったが、崩壊した守備を正常に取り戻せたのは大きいように思う。前季降格したチームのほとんどは守備崩壊を立て直せないことに要因があった。
■両ボランチ不在
この日、ホームで戦うトリニータにとってシャムスカサッカーの誇る両ボランチの不在はとてつもなく大きいようにおもった。(代わりにアビスパは最前線にまでボランチを二人敷いていたのだが)
序盤から大分は中盤でボールが落ち着かず、いつもの中盤からの展開力も失っていた。
アビスパは、左の根本の出しどころと高松のポストプレーさえ気を配ってさえよければ良かった。
この日アビスパが失点するとしたらセットプレー以外には考えられなかった。
トリニータは後半ボールが回りはじめいくつかのチャンスを作ったが、アビスパの守備組織の復元とともに実はGK水谷に自信が蘇っていた。
チームの守備組織と水谷の冷静なプレーは表裏一体にある。
これまでの数多くの失点は水谷のせいではなく、彼に自信を失わせるようなサッカーをした川勝氏にあるのだから。
■後押し
この日のサポーターには一体感があった。
アウェーで、ウルトラも一般サポーターに気をやりゲーム開始とともに作り出した統一感は選手たちに見事に伝わった。
博多の森トリニータと戦った時の、斜(ハス)に構えた応援ぶりは無かった。
数多くの新作ゲーフラとともに、アウェーゴル裏で呼びかけた「残留」のメッセージは選手たちの魂の奥底に深く響いたに違いない。
こういう時のゴル裏らかの一体化した後押しは選手たちに直に響く。

『(残留のプラカードは)見えました。感動しました。自分たちがやらなければいけない、なんとしても勝たなければいけないと思いました。引き分けでも、サポーターが「まだまだ」って言ってくれたんで、次は絶対に勝ちたいです』(J1初先発しこの日血を流しながら奮闘し次戦も先発が確実な柳楽・談)

いずれにしても勝ち点3が手元にあったゲームであった。
あとはアレックスの前に古賀誠史を持ってくるだけである。