ケンゴ躍動

[天皇杯4回戦、川崎ー鳥栖]:等々力競技場
しかしリーグ戦終盤の難しい時期の天皇杯
優勝を目指すチーム、残留を目指すチーム、あるいは昇格を目指すチームはリーグ戦に集中したい。
チームの状況を悪くしたくない為に負けないように戦う。
この時期はチャレンジするJ2やJFL、地域リーグから上がって来たチームの方がどちらかといえばモチベーションは高い。
ナビスコ決勝の翌日は川崎方面に用事があったついでに4回戦は等々力へ出かけた。
■フルメンバーのフロンターレ
サガンは、いつも以上に守備の意識が高く、センターに張る高橋義希と衛藤のふたりが丁寧に仕事をする。前線からは、やや下がり目の山口と藤田がプレスをかけ、前半はかなりコンパクトに戦った。
ベストメンバーのフロンターレは、優れた個人の能力で突破を図るがスキのないサガンの守備に手を焼きはじめる。サガンの二人のボランチは、起点となるフロンターレのトップ下、マギヌンのケアを怠らない。
前半終了時点で0−0のドローは、観戦するスタンド的には意外な展開。
この日は貴賓席にオシムさんも来られていたが、5千人のスタンドもサガンのチームとしての出来の良さに感嘆の声を漏らし今季のJ2のレベルの高さとサガンのチームとしての成長ぶりに目を見張ったように思う。
こういう場で若いチームにとっては強い相手と戦うことがどれだけ重要なことか思い知る。
■潔く戦う!
後半、イクオさんが勝負に出る。
後半開始からFW新居を出し、その後ベンチはスグに尹晶煥に準備させる。ここがなんともイクオさんらしさ。
丁寧なゲーム運びの前半のピッチ上の緊張感を自ら破り勝負を賭ける。
前線からのプレスを解き、相手のDFラインのスキを突こうという作戦か。
こうなるとチーム力に差があるフロンターレが優位。サガンの張り詰めた緊張感は後半32分の後半ケンゴ(中村憲剛)の強烈ミドルで途切れてしまった。
鄭大世(後半35分)、ジュニーニョ(後半44分)と続くスケールの大きな攻撃でサガンの息の根を止めてしまう。
中でも22歳の在日選手FW鄭大世はまるでアドリアーノのような風貌で、我那覇と二人並ぶと相当な圧力感が漂う。

「学ぶべきものが多く失うものは何も無し。」「まあゲームは失いましたが。我々がこの後クラブ作り、チーム作りの中でどういう道を歩むべきか、フロンターレの選手たちが示してくれたと思います。」
後半勝負に出ましたか?という問いかけに「勝負に出ました。後半10分くらいから守備に回される時間が多くなってきたので、点が取れない状況が少し感じられましたから、点を取りに行こうという判断をしたので、これは仕方ないと思います。特に今日良かったと思うのは、フロンターレがマジメですし選手も一生懸命にやりますので、我々にとってはJ1のチームはこうだということを勉強させられたこと。フロンターレに感謝したいと思います」(試合後のイクオさん)

個人としての強さ、スキルの大きな差が表出された後半の15分間でした。
潔し、松本育夫

■Project12
4年前は2部でアビスパとほぼ同じレベルであったフロンターレ

社名を変え体制を整え、サポーターを巻き込み、地域に根ざし、この短い期間で彼らは今では1部の優勝争いをするまでになった。
アビスパにはとても及ぶ話ではないが今季フロンターレ10周年の大きな事業を展開した。これまでのクラブの努力、過去をリスペクトする文化、若手の育成など、地方クラブが学ぶべき点がここにはある。

そして何もそっくり真似をすることもない。
しかし現状に一喜一憂”だけ”するのではなく、過去をリスペクトする文化だけは地元・福岡のクラブチームとサポーターに欠けている点である。
別の機会に詳しく触れるが、このところアビスパのクラブの幹部や担当と折衝しながら感じるのはその点。
クラブ担当が表現していた「興行」と言う、まともではない貧弱な認識。そこには文化のかけらもない。
チーム強化の継続性は、底に流れるクラブ文化の上に立つクラブのビジョンとサポーターの連動・後押しがあればこそ。
我々はいわゆる普通の、一般のサポーター視点でコミュで討議しサイトを立ち上げた。
そして先日からHAKATA-NO-MORI PROJECTとしてクラブ側へ数多くの提言を行っている。
もちろんまとめた提言は数多くの方々の知恵と前向きなイメージの集合体である。

来季は藤枝からチームが移転して「12年」。
「12」はサポーターナンバー。

サポーターを巻き込んだムーブメントが何かできないか。
11月1日にはクラブ側に「Project12」と題し、正式に12個の提言(動機付け)を行ったばかり。
フロンターレには及ばずとも少なくともアビスパらしいサッカー文化がこの地域に創造できればいいなと思う。

■イクオさん等々力に登場!
試合前、左にNHK山本氏、手前・サガン井川社長、右・イクオさん
等々力のサポーターはイクオさんを大きく温かく迎えた。
いつもベンチから飛び出して大声出しあれこれ指示するのは赤帽の岸野さん(コーチ)であるが、この日はベンチの壁に寄り掛かりジッとたたずむイクオさんを3m位の距離からNHKがカメラを向けていた。試合中ずっとである。