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[J1第30節、福岡ー広島]:博多の森競技場
■広島の変化と進化
チームには波がある。特に相手を研究して戦いを挑むほどの余裕のないチームならなお更。
広島とは雨のビッグアーチ以来となったが。ペトロヴィッチさんによってまるでチームが生まれ変わっていた。試合前の広島はここ10戦5勝2分3敗。
各世代の代表クラスの選手たちを数多く揃え、戦力的には優勝争うような順位にいるべきチームだと思うが、広島は序盤の守備崩壊によってこの日まで残留争うような地位に甘んじてきた。
この春に宮崎キャンプを見学したが、その練習態度の真面目さに感銘を受けた戸田を中央に立たせ、両脇に盛田、森崎和の3バック、相手ボール時には駒野ら両サイドを下げて守るやや5バック気味の守備陣形。
サイドに穴を作らず特に福岡側の左サイドへのケアは十分にできていた。
福岡に攻め手を作らせようとしないペトロヴィッチ監督の意図したものが全員の意思統一によって形となって現れていた。
攻撃時には3−3−2−2といったような陣形で、アウェーのゲームで守備面に重きを置きつつ、FWを包むように両サイドを広く張らせ、しかもどちらのサイドを使うか局面局面の意図が明確であった。
攻撃面では強豪チーム相手はともかく、この日はもちろんウェズレイ佐藤寿人の個人技でどうにか形はできていた。
そして前半の15分、16分と絵に描いたようにこの二人によって2得点がもたらされる。2点目は完全に福岡のミスであったが。
雨中の激しいブツかり合いに福岡の選手たちが滑ったり転んだりしていてもこの二人は中々倒れない頑強さと身体能力を有している。寿人17得点、ウェズレイがこの日の2得点で16得点。
福岡はこの二人で奪った得点数さえチームとして持ってはいない。(30節で29得点)
広島のゲームは開幕戦、5月6日の雨中の悔し涙、そしてこの日で3試合目だったが、ここまで変わるかと思うくらいのチームに仕上がっているように見えた。
広島の残留がほぼ決定した。
■福岡の緩さ
福岡はリーグ戦でもここ10試合で4勝2分と14の勝ち点を積み重ねてはいたが。チームは天皇杯も入れての「3連勝」で、勘違いでもしたのだろうか。
この日はまるで惨敗したFC東京戦や、手も足も出なかった清水戦のようなゲームの入り方で、何より!戦う姿勢でゲームに入っていなかったように見受けられた。
相手の選手たちの方が残留目指して戦っていた。
果たして「自分たちの戦い方」は一体どこに置き忘れてきたのだろう。成すべきことが表現できない。チームとしてもハッキリせぬままゲームに入ったように見えた。
ベンチワークも相変わらず。足元が悪いなら悪いなりに、パスが繋がらないなら繋がらないなりに、的確な指示・采配が欲しい。
雨中滑りやすいピッチに無類に弱い選手たちが多い中、守備面では足腰強靭なホベルトを先発で使わなかったのは解せないし、途中交代も遅すぎた。
序盤で両サイドが塞がれてあることがわかればミドルが打てる選手を中央に構えたり、広島のDFラインを考えれば高さを生かすなど、ベンチとしても打つ手があったはず。
これはあくまでも結果論だが、左に辰徳を入れ、アレックスと誠史を前目に置くなり、ボランチホベルトと城後を構えるだけでもまるで違う。大一番という認識があれば、雨中の2失点後に金古を前線で競らせ中央から揺さぶる手もあった。
おそらく個人の判断だろうが、誠史と久藤のポジションチェンジ以外にチームとして工夫の後がまるでなかった。
おまけに柏原丈二氏の癇に障るホイッスルにイラつかされ、言いようのない脱力感だけが残った広島戦であった。
もちろん最後まで何があるかわからないが、現実的には気持ちを切り替え、これで16位を目指すしかなくなった。
川勝氏の采配も残り4試合。
優勝を諦めてはいないフロンターレとガンバ戦を未だ残している。
まずは週末は等々力で戦う意思を取り戻さなければならない。