入替戦へ

[J1第34節、福岡ー甲府]:博多の森球技場
■攻撃の組み立て
これまでを振り返ると、川勝体制になってのアビスパ福岡のチーム力は、10月がピークであったように思う。

守りきった32節のガンバ戦はともかく、このところの、第31節の川崎戦、33節の名古屋戦とスタジアムで感じることだが、10月に鹿島、磐田と堂々と渡り合った時の”攻撃”のリズムはすっかり影を潜めている。
現在はホベルトを中心とした守備組織は健在であっても、自陣ボール時にはペネルティエリアまでボールを運ぶのがやっとのような状態である。
ブルーシートの内部で何をやっているのか知らないが。単調な攻撃は相変わらずで、3人目の動きが全くないし、後ろからのビルドアップもない。

アビスパが勝ち点を奪うにはしっかり守って守りきり、少ないチャンスを決めていくというやり方しかないわけであるが。そういう意味では先制点を奪われないようにコンパクトな陣形でスキを与えない戦いしかない。
前線の布部や薮田あるいは飯尾などが有効なのは、彼らの優れたポジショニングの良さにあると思うが、疲れを厭わぬ運動量があることも事実である。
■今季最高の後押し
甲府戦は息詰まる緊張感もあったが、スタジアムの熱気や音量はいつもの比ではなかった。
選手たちを最後まで後押しできたのは、博多の森に集うサポーターのエネルギーであった。
終戦がホームでなければこういう舞台も作ることはできなかっただろう。
午前中に降っていた冷たい小雨も上がり、上空には晴れ間ものぞくような悪くないコンディションもアビスパの選手たちに味方した。
■藤田不在
それにしてもこの最終戦ヴァンフォーレはいつものヴァンフォーレではなかった。
第一歩の出足の強さやボールスピード、ボールへの寄せ、瞬間判断。すべてアビスパの選手たちの方が上回っていた。
前半はバレーでさえも身動きがとれず、アビスパのボール支配率は70%近くであったろうと思う。またヴァンフォーレにはシュートらしいシュートチャンスもなく、前半終了間際の山崎の1本のみであった。
アビスパは後半立ち上がりにパスミスから失点したが、それ以外は安定したゲーム運びを行っていた。
右SB吉村と右サイドの久藤の連動とケアでバレーのサイドを封じたことも大きかったが、このゲームはヴァンフォーレにとっては藤田不在が大きかったように思う。
サイドチェンジや正確なパスを持つ攻撃に起点なるべき藤田の不在が、ヴァンフォーレの中盤に緩みを生じさせているように思った。
■未だ何も手にしていない
アビスパの鋭い出足にファウルで止めるしかないヴァンフォーレ。DFアライールの途中退場もあったが、アビスパは先制点を奪われても誰もあわてないゲーム運びができていた。
FWバレーとは、宮本と千代反田が交互に随所で肉弾戦を繰り広げていたが、バレーへのボールの出所はケアできていた。(試合終了後には、バレーがやりやった千代に熱きエールを送っていたという友情物語も某所で耳にしました)
多くの方々が携帯片手に長居の途中経過を気にしつつ、セレッソと戦うフロンターレのリードでアビスパは落ち着いてドローに持ち込めば良かった。
後半23分、2年ぶりという佐伯のゴールで入れ替え戦へと向かう流れは加速した。
このゲームのMVPは久藤。
TVには写らないだろうが、彼のチームの為に働く労を厭わぬ運動量と優れたポジショニングはいくら褒めても褒めきれない。
アビスパの苦戦の要因はチーム統括たる長谷川氏の血迷いのせいであるが、セレッソの降格の原因は久藤を手放したことにあると思う。
なるほど最小失点のドローで入れ替え戦出場を決めるという勝ちきれなさも今季のアビスパを象徴している。
しかし我々は未だ何も手にしていない。
入替戦には、シーズン序盤の失点の少なさと、川崎フロンターレの後押しによってなんとか出場権を得ることができた。