「共犯者」になること

前回に引き続き、日本経済新聞に「オシム@ジャパン」の連載の2回目が掲載された。(毎月第4金曜に連載)
題して今回は「コーチこそ海外修行」。その一部を抜粋して紹介したい。
■CLのアウェールールの弊害

『絶対に負けられないとマスコミがあおり、それにサポーターが乗せられてプレッシャーを感じた監督や選手は本来やるべきことを忘れていく。さまざまなプレッシャーに縛られた選手たちは闘技場のグレディエーター(剣闘士)さながら。救いは負けても死人にならないことだ。』

オシムさんは京都への旅行中にも奥さんとは別行動で、ホテルでサッカー中継を見続けるほどのサッカーオタク。今週のCLのゲームもほぼ観戦している様子である。どの試合がつまらなかったか、中村のチームのことや対戦したミランについて語る。そしてアウェーゴール方式の弊害を引き合いに出しながらCLの現在のシステムの虚を突き続けるオシム

『アウェー2倍のルールもそうだが、もっとサッカーが本来持っている自由さ、しなやかさを引き出すような制度設計をCLは考え直すような時期に来ていると思う。』

■名将たちに学ぶ

『例えば、Jリーグには過去、素晴らしい監督がいた。名古屋のベンゲルは今、アーセナルを率い、カルロス・ケイロスマンチェスター・Uにいる。鹿島にはクラブWCを制したアウトゥオリがいた。ツテはあるのだから無給、いや金を払ってもいいからチームの端っこに置いてくれと、なぜ頼みにいかないのだろうか。』

と欧州や南米の名将たちのそばに修行に行くことを勧める。

ベンゲルアウトゥオリは日本人のアシスタントを必要としないだろうが、名古屋や鹿島経由の話なら実現するかもしれない。宮本や三都主が移籍したザルツブルグにも、コーチをセットで送り込めなかったのか。名将トラパットニーの弟子ともなれば、学ぶことはいくらでもあるのに』

■「共犯者」になるということ

『練習方法は練習場の金網越しでも見ていればわかること。何が大事なのか。それはスタッフルームや選手のロッカールームに入り込み、試合ではベンチに座って彼らと同じ空気を吸い、「共犯者」になることだ。それは書物を読んだり、映像を見ているだけでは分からないこと』
『なぜ、このタイミングでこの練習をするのか。勝ったとき、負けたときで選手にどんな声をロッカールームで掛けるのか。選手に何を言うべきで、何を言わないでおくべきなのか。さまざまなストレスやプレッシャーとどう闘い、消化しているのか。私が代表の練習がある度に大勢のコーチを集めるのも、私から何かを感じて欲しいからだ』

『日本は監督の輸出国を目指すべきだし、選手より、監督に海外組が現れる方がよほど私はうれしい。日本サッカーが本物になった証しにもなる。』
オシムさんの言葉には補足も説明もいらない、いずれも珠玉の言葉ばかりが今回も並んでいる。