イ・ナ・モ・ト

[キリン杯、日本代表ーコロンビア代表]:埼玉スタジアム
■センターラインの整備
私は松本のモンテネグロ戦もTVで見ましたがコロンビアの強さやうまさは、近年のキリン杯参加チームの中では抜けていたように思います。
万が一アウェーでコンディションの整ったコロンビアと戦うようなことがあれば、日本チームも歯が立たず相当やられたと思います。
そのコロンビア相手に無失点で終われたのは、国内最高のディフェンダー中澤とクレバーな阿部の二人のセンターの奮闘ぶりによるものでしょう。
この日1トップで強さと精神性の高さを見せた高原と、その中澤が加入することによって、オシムジャパンはチームとして失っていたセンターラインに背骨が入ったように見受けます。
■見事な守備組織
コロンビア戦後、メディアはオシム言葉尻だけを捉え、総じて稲本(と浩二)パッシングをしています。あの湯浅氏さえ一面的な酷い書きようです。
新鮮な視線を失った湯浅氏は今に始まったことでは。
攻撃的な側面でみると、日本チームが比較的ゲームになったのは後半になってからですが。これは長期遠征の後の中1日の連戦による、明らかなコロンビアの選手たちのコンディションの低下によると思います。
コロンビアが動けていた前半にやられなかったのは、駒野、浩二の相手FWのケアと、稲本、遠藤、鈴木啓太の中盤3人の守備的な貢献が十分に効いていたから。
前半はディフェンスラインが下がり気味で、前線からのプレスが利かなかったので中盤から後ろの選手たちは大変だったと思います。
このゲームの一番の収穫は、02〜06年で失った強豪国相手の守備組織を取り戻せたことと思っています。
■知らぬ稲本の処方箋
同世代では抜けたポテンシャルを持つ稲本は、かってユース時代に小野伸二の登場を見てトップ下を諦めたと聞いています。
おそらく稲本をトップ下に使ったのは、オシムが稲本の長所と特性を自分の目で確かめていない*1のと、憶測するに俊輔を組み込んだ時の駒並べで優先的にトップ下が空いたからでしょうか。
4バック(&1トップ)での中盤の優先順位はオシム的には遠藤、鈴木啓太、中村健剛。そこに俊輔を組み込みトップ下が空いた。
本来なら稲本と啓太二人をボランチにした方がチームとしても整うが、遠藤、俊輔、健剛を前に並べると中盤の流動性が明らかに不足します。
アジア相手なら個人の力でなんとかなりますが、ここは強豪国と対戦した場合の日本チームの今後の課題であろうと思います。
オシム的にはコロンビア戦で敢えて稲本をエジキにしたように見えましたが、羽生のような動きのできる選手の到来を待っているのかも知れません。*2
さて。
今や代表監督にとどまらず日本サッカー界の強化担当でもあるオシムも、いつでも”完全”ではありません。
確かにベストなコンディションではなかったが、史上最高のセンタープレイヤーである稲本の使い道をオシムオシムのやり方であやまったように思います。
二人が復帰するのに随分時間がかかりましたが、個人的にはコロンビア戦で久々に稲本と浩二のプレーを見て心の底からときめきました。
昨今観客が入らないのは明らかに川淵氏のこれまでの仕事ぶりの所為でありますが、新たな次元に入ろうとしている代表チームが面白いことになってきました。

*1:このゲームは稲本と中田浩二を見たかったゲームといえるかも知れません。それにしても「見る」なら稲本の位置は全然違うだろうと思います。攻撃参加の余裕はありませんでしたが中田浩二は身体の使い方が一段とうまくなっていましたし、パスの精度が上がっていました。

*2:前線を流動化できる自らオートマニズムを持った選手は国内にもあと二人ほどいます。