激しく、攻撃的な守備 その1.

札幌ドームで、アウェー札幌戦を戦った福岡は、丹羽、大久保、永里の得点で、3−0の完勝。
これで、2試合連続して3得点。
果たして、開幕2連勝が”本物”かどうか、今年の戦い方がこれまでとどう違うのか、ここで2日間にわたって考察したいと思います。
■トレーニン
敬愛する中倉さんのブログにあるように、今年の福岡のトレーニングは、今までとは全く違ったトレーニングをしてきました。

『インターバル走が終わって次のメニューに移るときも、スタッフの口から出た最初の言葉は「止まらない、止まらない。動いたままで」というもの。そしてすぐにパス練習が始まります。疲れた中でのパス練習は、時折ミスも起こりますが、トレーニングの目的は疲れた状態でも、正確なプレーが出来る技術と集中力を身につけさせるというもの。「ぼーっとするな」「丁寧に、丁寧に」「受ける動きにアクセントを付けて緩急を付けろ」。スタッフが、そんな檄を飛ばしていきます。』(2月9日付け「フットボールな日々」より)

今季、フィジカルコーチとして加入した松本良一コーチは、北九州出身。
あのジェフ千葉で、02年から05年までオシムさんの下でフジィカルコーチをしていた方です。
ご存知の通り、後の日本代表監督に就任したオシムさんは、03年から06年迄4年間、千葉で指揮をとり、短い期間で、万年下位のチームをカップ戦に優勝するほどに仕立て上げました。
負荷をかけるトレーニグとともに、何色かのビブス使ってトレーニングする松本コーチの加入は、今季から若い選手を中心に戦っていく福岡にとってはうってつけといえるものでした。
オシムのサッカー
松本さんがスタッフとして参加したオシムサッカー。
オシムさんといえば、6色のビブスを使ったトレーニングで有名ですが、オシムさんに鍛え上げられたチームは、日本にはこれまでなかったもので、先進的でそして知的なサッカーを、ピッチ上で繰り広げることでした。
オシムサッカーに魅せられたのは自分だけではないと思いますが、個人的にも、オシムさんのチームが、ナビスコ杯優勝(国立)を果たす姿を目の当たりにしたり、またフクアリのあるJR曾我駅には、何度か足を運んだりしました。
オシムさんは、選手たちに、肉体的には「走力」を求め、更に、常に頭を使った「賢く走るサッカー」を求めました。
それこそ【全員攻撃、全員守備】、【ボールも、人も動くサッカー】を、千葉と日本代表チームで実現しました。
詳しくは、「オシムの教義として」こちらにまとめられています。
■選手も不信感を抱くサッカー
昨年までの福岡は、リトバルスキー監督〜篠田監督と続く「ポゼッションサッカー」を標榜していました。
いわば、それは”勝者のサッカー”でした。
後からパスを繋ぎながら、時間をかけて相手のスキを作り、前線にボールを運びチャンスを作り出すというものでした。
しかし、常に、守備にはほころびを見せていました。
ボールは運べど、失点は多い、崩れた時には、大きな落胆と失笑を生む、本当にモロいサッカーでした。
リトバルスキー〜篠田(昨年までの)と続くポゼッションサッカーは、いかにも「攻撃している風」なサッカーといって良いものでした。
現実は、チームとして、決して得点能力が高いわけではありませんでした。
まあ、得点力が劣るのも致し方ありません。この3年間の福岡のサッカーは、相手チームに十分に戻る時間を与え、それこそ敵に守るべき強固な「陣地」をしっかり作る時間を与えるサッカーでした。
ボール回しだけで自己満足してるサッカーは、守備専チームが多いJ2には不向きでした。
何より、結果が出ない期間が長いと、ベテラン選手は疑問を抱き、長くチームは一つになることはありませんでした。


昨年の最終戦を除いて。


■09年最終戦が残したもの
昨年の最終戦といえば、久藤清一が引退を覚悟しながらのゲームでした。
地元・筑陽出身の久藤は、膝の状態が悪く、満身創痍でした。
久藤といえば、伝説となった「神を見た夜」のゲームにピッチに立っていた選手です。福岡への愛着だけでなく、これまで、福岡というチームへの誇りを胸に戦い続けてきました。
09年最終戦は、その久藤がピッチ上で”鬼”となったゲームでした。
激しく、しかも攻撃的に相手選手を追いかけ、ボールを鬼神の如く追い回す久藤に刺激されて、全員が走りに走りました。
久藤だけでなく、黒部や宮原、中払たち、ベテラン選手たちが、それまでの悔しさや苛立ちを押し殺し、涙を流しながら走り回りました。
博多の森に、観客を引き込み、観客を感動させるプレイが、一瞬、戻ってきたのです。
ともかく、選手たちがピッチ上で繰り広げる最終戦フォアチェックは、尋常ではありませんでした。
切り替え早く、相手チームにプレッシャをかけ続け、単に、ボールを奪いに行くけでなく、ボールの出所を封じ込め、相手にスペースを与えないプレー、そしてプレミアのような鋭く速い球足のミドルパス、最終戦のスタンドは本当に感動しました。
(この項、続きます)