激しく、攻撃的な守備 その2.
札幌戦を振り返る前に、これまでの4年間を少しだけ。
■悔しさをピッチにぶつける
福岡のこの4年間は、本当に悪夢としかいいようがありませんでした。
サッカーを、一度も、見たことも、関心さえ抱いたこともない人が、人事権だけは振りかざす茶番。
瀕死にあえぐクラブチームに最も必要な「愛」と「熱意」を打ち出せないフロント。
中長期のビジョンはおろか、明確に打ち出せない強化方針。外国人監督とベンチの不和。ある時期の現場放置。
S級取りたての稚拙な指揮官の下で、一つになれないチーム。サポートすらしない煽るだけの地元マスコミ。
何より、選手たちを「道具」や材料としか見てない一部のフロント、かって追い出すように放出された選手たち。
そして選手たちの胸をよぎる明日への不安。
そういう中での最終戦。
一部の選手からは「久藤さんが引退するなら、自分は移籍する」と、はっきり明言する者まで現れた中の09年最終戦。
この、見てる者を揺さぶり動かすゲームの、選手たちのモチベーションは、選手たちの内側から沸き起こったものでした。
それは、やり場のない「怒り」であったり、思うようにいかない「悔しさ」であったり。
サッカーとはこうやって戦うのだ。
前日も書いたように、最終戦に久藤が火をつけた激しさは、後を受け継ぐ、若い選手たちの胸に十分に残るものでした。
■美しいゴール
さて、開幕2戦目となったアウェイの札幌戦。
シーズンは始まったばかりです。
が。
この2試合を見て、福岡は、チームとして「立ち直った」と、明言できると思います。
それは、後半4分の連動したプレイに凝縮されてあると。
後半の4分29秒
元々、フィールドプレーヤーであるGK六反から、矢のように放たれた距離のあるボールは、相手DFを交代させるに十分なものでした。
・4分33秒
ポジショニングに優れたボランチの末吉は、誰よりも早く前へ出、この試合もセカンドボールを相手に渡さず、”ワンタッチ”で永里へパスしました。
末吉の彼特有の柔らかいタッチでのパスでした。
・4分34秒
左SHの永里は、セカンドボールに反応した末吉の動きに素早い動きで合わせ、これも”ワンタッチ”で左サイドの中島へとパスしました。
・4分36秒
一連の動きの中で、一番に特筆される動きがここで出ました。
末吉のパスを受けた左SBの中島は、相手選手が5人も密集した中を、僅かなスキしかないスペースを”ワンタッチ”で、それも目の覚めるようなスピードで、ミドルパスを出し、大久保へ渡しました。
中島の左足から放たれたパスは、間違いなく得点へと繋がる、大久保への決定的なパスでした。
・4分37秒
カベになった大久保は、”ワンタッチ”でポストプレー、抜け出そうとする永里へ短いパス。
絵に描いたように、得点への舞台は整いました。
・4分38秒
相手DFを翻弄するかのごとく、素早く抜け出た永里は、ペナルティエリアへとドリブル突破。
永里の右足から放たれたシュートは、非常に精度の高いもので、待ち構えるDFの頭上を越えてゴールネットを揺らしました。そしてこの時、FW高橋と右SHの田中佑昌は、独特の間合いで相手DFをひきつけていました。
全員が連動しての3点目のゴールは、チームに活気と躍動を与えるに十分なものでした。
■犬のように相手を追い回す
切り替えの早い動き。ボールも人も動くサッカー。
相手ボール時には、第1歩目から全速力のチェイシング。
ボールを奪うと、守備にまわった相手を翻弄するワンタッチプレーの連続。
相手を、犬のように追い回すプレー。
これまで、大久保だけが表現していた泥臭いプレーを、昨年の最終戦を経て、福岡は全員が出来るようになっていました。
激しく、攻撃的な守備を土台にしたサッカー。
DF陣4人とボランチの二人とがコンパクトにした中、相手の選手がバイタルエリアに侵入することは至難の技。
前半に2失点した札幌は、後半から選手を変え、システムを変えて、当然のように点を取りにきました。
対する、福岡は、相手の守備組織を超えたスピードと展開で3点目を奪い、相手選手を意気消沈させました。
この得点劇を見て、これまでヘッドコーチの指導宜しく、ここ2試合の福岡の組織的な攻撃は、本物だと言えます。
この後の指揮官の課題は、丹羽、中町、末吉、大久保ら、センターの選手を累積や怪我で欠いた時のリスク管理にあるのかも知れません。